シチリアの町を歩いていて、
「え?なにこれ?」
と思った方もいらっしゃるはず。
そう、シチリアのシンボルです。
かく言う筆者も、この独特なデザインのシンボルに慣れ親しんだ今だからこそ好んで日常にも取り入れたいと思っていますが、最初は「え?」と思いました(笑)。
今回はそんな愛すべきシチリアのシンボルについてご紹介します。
シチリアのシンボルの意味
このシチリアのシンボルは「トリナクリア(Trinacria)」と呼ばれます。
1つ目のaにアクセントがあるので、発音的にはトリナークリアという感じ
研究者たちの間では、もともとはアナトリア半島(現在のトルコの一部)の町々の宗教的シンボルであったと考えられています。そこからギリシャを経てシチリアに伝わり、徐々に定着していきます。
トリナクリアの構成は、女性の頭とそこから飛び出す3本の脚。それぞれちゃんと意味があります。
三脚巴
まず3本の脚ですが、三脚巴と呼ばれます。この文様はシチリア独特のものではなく、多くの古代文化で見られます。「いだてん」ではありません(笑)
シチリアの他にも、マン島のシンボルにも用いられていますし、ドイツやポーランドをはじめとするヨーロッパ各地でも見られます。
では、シチリアのシンボルとしては、この三脚巴にどんな意味があるのでしょうか。
シチリアは見て分かるように三角の形をした島。この三脚巴はシチリア島の3つの岬を表していると言われています。
つまり、西部はマルサーラ(Marsala)あたり、カラブリア州と船でつながるメッシーナ(Messina)県の北部、南東部のパキーノ(Pachino)と呼ばれる地域です。
メデューサ
真ん中の女性の頭は、ギリシャ神話に出てくるゴルゴン3姉妹のうちの一人、メデューサを表しています。
ゴルゴン三姉妹は、ヘビの髪や鉤爪を持ち、見る者を石に変えてしまうという恐ろしい怪物。なぜそんな怪物がシンボルになっているのでしょうか?
前述の三脚巴とメデューサが一緒になったシンボルは、ヘレニズム期に出来上がったのではないかと言われていますが、当時はギリシャ神話との結びつきや宗教的意味合いが強いものでした。
それが、ローマ時代になると宗教的な意味を失い、もっぱらシチリア島の地理的なシンボルとして使われるようになります。
地理的な意味は、島の形を三脚巴が表していることに加え、メデューサの髪にも表れています。ゴルゴン3姉妹の髪はヘビだと言いましたが、シチリアのシンボルでは麦の穂。これは、シチリアが古代ローマ帝国時代に穀物貯蔵庫として大きな役割を果たしていたことから、シチリアの肥沃な大地や繁栄を表しています。
州旗は麦の穂ですが、それ以外はヘビの髪のままのデザインのトリナクリアもあります
宗教的な意味を失ってもまだメデューサが描かれているのは、シチリア人の信仰深さや慣習を大事にするところが影響しているのでしょう。魔除けの意味で神殿や家などいろいろなところに描かれていたので、今でも幸運を呼ぶお守り、あるいは魔除けの役割として、家やお店の玄関などでよく見かけます。
シチリア州旗の色には意味があるの?
トリナクリアはシチリア州旗のシンボルとしてももちろん描かれていますが、その背景は赤と黄色。これにも実は意味があります。
この赤と黄色の背景の歴史は、トリナクリアと比べれば最近のこと。
1282年に当時シチリアを支配していたフランス(アンジュ―家)に対して起こった反乱(「シチリアの晩祷」)の際、最初に立ち上がったのがパレルモ(Palermo)とコルレオーネ(Corleone)という町でした。
そう、『ゴッド・ファーザー』のヴィトー・コルレオーネの生まれ故郷ですね!
その勇気を讃え、パレルモは赤、コルレオーネを黄色で表し、シチリア州旗の背景としているそうです。
さいごに
この記事ではシチリアのシンボル「トリナクリア」について解説してきました。
意味が分かると、何だか愛らしく感じてきませんか?
今では、ついついトリナクリアキーホルダーとか買ってしまいます
トリナクリアそのものや、トリナクリアをモチーフにしたグッズはお土産屋さんにも多数並んでいます。
メデューサの髪が麦の穂のもの・ヘビのもの、表情、大きさや色合い…などなど1つ1つ違うので見るだけでも楽しいですよ。
お気に入りが見つかったら、ご自身へのお土産にいかがですか?